若きジャズ・ギターのミューズ、サム・ウィルソンのピュアでイノセントなデビュー・アルバム。デジタル配信のみでリリースされたファースト作「Into A Heart」を全曲録り直し、ボーナス・トラックとしてオリジナル4曲とスタンダード3曲を追加収録!
【アルバムレヴューより】
ギター1本でのインスト作で、ES-339の温かく甘いトーンに耳を奪われる1枚。叙情性を帯びたアルペジオ、ルートの音の上を自由に駆け回るソロ、楽曲にアクセントを加えるハーモニクス、これらひとつ一つの音が物語性を持ち始め楽曲を紡いでいくさまはひたすら美しい
-ギター・マガジン10月号
誰にも似ていないギターを弾く。全編ソロ・プレイで、一切ダビングはしていないようだ。全体に耽美的というか、内省的なオリジナルが9曲と、カヴァーが3つの全12曲。テクをひけらかすこともなく、結構淡々と弾き進むのだが、独自なコード展開とハーモニーを聴かせて、彼女ならではの世界に引きずり込んでくれる。何処となく60年代後期の故ラリー・コリエルの一部の曲を思い出させる場面も。特殊なテクを用いている様子はないのだが、ぜひとも早い段階に生で見てみたい!期待は大だ。
-ジャズライフ10月号
曲調からはM. ヘッジズやメセニーの影響が感じられ、曲に翳りを添えるのはE.レムラーやジム・ホールからの影響だろうか。特徴は全くの一人で録音されたソロ・アルバムであること。ただテクニックだけで強引に迫るのではなく繊細な響きが静かに心に入り込んでくる、そんなタイプの演奏。ジャズだけでない多彩なテイストを感じさせる点も興味をそそる。ES-339とフェンダー・デラックスアンプの組み合わせによるナチュラルなサウンドもとても素晴らしい。
-ジャズジャパン10月号
ジャズミュージシャンの宝庫であるカナダから、またまた女性の新星が登場した。「イントゥ・ア・ハート~ギターと私」でデビューしたばかりのギター奏者、サム・ウィルソンである。セミアコのソロ演奏で曲はオリジナルがメイン。ほのかに温かく繊細で透明度が高くすがすがしい。大注目である
–毎日新聞2020年9月19日夕刊
【ライナー抜粋】
サム・ウィルソンは、カナダの女流ギタリストである。おそらく、今回その存在を知る人が大半だろう。しかし、ジャズ・ギターの真髄をきっちりと知り、周りを見渡して呼吸しながら、今の担い手であることをしなやかに主張するその存在は広く知られてしかるべきだ。自然体と言いたくなるソロによる演奏が、12曲。その成り立については、なんと大胆なと感じる人もいるかもしれない。だって、今日日、そんな潔い設定でアルバムをリリースするギタリストなどそうはいない。
実は、彼女のデビュー作『In to Heart』(自主リリースで、2017年の録音)は完全ソロによる5曲入りのEPだった。ここでの、6,7,9,10,12はそこに収められていた彼女のオリジナル曲を再演したもの。そして、今作のためにウィルソンはさらにオリジナルの4曲(1,2,4,11)と視点アリの他者のジャズ曲のカヴァーを3つ〜それらは、彼女の楽曲趣味やジャズ観を直裁に伝えるものになっていると言える〜を用意し、楽器と一体化し、様々なストーリーとジャズ観を思うまま紡ぐギタリスト像をしっかりと打ち出している。
ちなみに、彼女が弾いているギターは、ギブソンのセミ・アコースティック型のエレクトリック・ギターのES 339(著名モデルであるES 335を少し小型/軽量化したモデル)。そして、ダダリオのフラット・ワウンド弦を張り、アンプはフェンダーのデラックスを使っている。アンプはクリーンなセッティングで、基本エフェクターは用いていないとのことだ。
シンプルな設定が取られているものの、ここに認められる演奏は雄弁にして、多大な誘いを持つ。ウィルソンは、変わらなくてもいいジャズの技法や意味を今の詞的な文様の描き方や情緒を介して瑞々しく表出することを成就。ああ、なんと素敵なこと!かような才を持つ彼女は、今のジャズとしてもっとも必要なものを以下のように考えている。
「現在のジャズ音楽にとって最も重要な要素は、偉大な人々と伝統を尊重しつつ、変化を受け入れることです」。
… 佐藤英輔
「私に大きなインスピレーションを与えた最初のミュージシャンは、ピンク・フロイドのデイヴィッド・ギルモアでした。私は多感な時期にピンク・フロイドをたくさん聞きました。その後、ウェスモンゴメリー、ケニー・バレル、ジム・ホール、エミリー・レムラー、マイケル・ヘッジス(以上、ギター)、アビシャイ・コーエン、エスペランサ・スポルディングといったアーティストたちからインスピレーションを受けています。そして、私にインスピレーションを与えるアーティストのリストはどんどん増え続けています」
・・・サム・ウィルソン
サム・ウィルソン:
カナダのオンタリオ州生まれ。10歳のころからギターに興味を持つ。ギターが最初の楽器だが、後に独学でピアノも弾くようになり、ピアノは主に曲を作る際に弾いている。彼女がジャズに興味を持ったのは、高校生のとき。ジャズのプログラムを受講やジャズ・バンドへの参加、そして、ウェス・モンゴメリー、チャーリー・クリスチャン、チャーリー・パーカー、マイルス・デイヴィス、デューク・エリントンらを研究にも取り組む。その後、セント・フランシス・ザビエル大学のジャズ過程を卒業。評価の高いルーネンバーグ・アカデミー・オブ・ミュージックや、ハリファックスのクリエイティブ・ミュージック・ワークショップに参加するなどし、ジャズの研鑽を続けた。そして現在はハリファックスを拠点に、ジャズ・フェスティヴァルやジャズ・クラブなどで演奏活動をしている。(ライナーより一部抜粋)
■パーソネル:
サム・ウィルソンguitar
録音:2020年/6月28・29日
■トラック・リスト:
1.イナーシャ
2.レイスウェイ・スピン
3.ベアトリス by Sam Rivers
4.サザン・リンボ
5.ピース by Horace Silver
6.グッドバイ・オーガスト
7.モーニング・モチベーション
8.アローン・トゥゲザー by Arthur Schwartz
9.イントゥ・ア・ハート
10.レット・イット・リーヴ
11.ハリー・アップ・アンド・ウェイト
12.エアポート・コンテンプレーション