夜の静寂に響くクワイエットなピアノ
夜の静寂に響くクワイエットなピアノ
『Waiting for Birth』でピアノ・ファンから絶賛された盲目のピアニスト、モンセフ・ジュヌ。
前作『ポップ・ソングス』に続くニュー・アルバムはスイスのヴァレールで行われた驚異のソロ・パフォーマンスを収録。スイスを拠点に活躍する鬼才、モンセフ・ジュヌの5年ぶりとなる待望のニュー・アルバム!
彼の研ぎ澄まされた感性から生み出されるオリジナル・チューンはじめアメリカン・スタンダード、フランソワーズ・アルディー、ジュリアン・クレールによるM7、ミッシェル・ルグランのM2、ニルバーナの名曲M8など好選曲も光るソロ・ピアノ・アルバムの新たなるマスター・ピース。
ライヴ演奏にもかかわらず冗長にならず、起承転結を意識した展開は、ライヴ会場で観客の心の波動を読むジュヌの気配が感じられる。~“Old Folks at Home(スワニー河)"には、フォスターの想いが込められている。「アメリカ南部での綿花畑(プランテーション)から逃れ、北部の自由州で生き延びる黒人達が、昔の子供の頃を懐かしく哀しく思い出す切ない曲」なのだ。故郷はジュヌにとっては、チュニジアになるだろうか。。この演奏を聴いて、僕のフェイヴァリット・ソングの何位かにこの曲がランクされた。“You Must Believe In Spring"は、言うまでもなく多くのミュージシャンが様々な印象を紡ぎだす素材にピックアップされる名曲。ロマンチックなメロディラインから、転換していく道のりが楽しい、本作での注目は、6分過ぎからの、キース的な展開だ。『Facing You』が、僕のキースのベストアルバムだが、“African Song"への流れはそれを思い出す。・・・瀧口譲司(Groovy)
■日本独占CD化
■トラック・リスト:
1.インプロヴィゼーション作品第2番
2.ユー・マスト・ビりーヴ・イン・スプリング
3.アフリカン・ソング
4.故郷の人々
5.74
6.プディ・セン
7.あなたのそばに
8.スメルズ・ライク・ティーン・スピリット
9.アラブの春
10.マイ・ワン・アンド・オンリー・ラヴ
録音:2018年10月/ヴァレール[スイス]
モンセフ・ジュヌ(ピアノ)
【モンセフ・ジュヌBIOGRAPHY】
モンセフは1961年、チュニジアのチュニスに生まれ。2歳の時、眼の治療を受けに(おそらく両親に連れられて)スイスに行き、少し後にスイス人家族の養子となった。6歳でピアノのレッスンを始めたが、養父が熱心なジャズ・ファンでその影響を受ける。モンセフ少年はクラシックだけではなく、ジャズの即興能力やブルース・フィーリングにも惹かれて成長した。
本格的なプロ活動を始めたのは1983年頃。88年には元マイルス・デイヴィス・バンドのサックス奏者ボブ・バーグを迎えて初リーダー作『ニューヨーク・ジャーニー』を録音。翌年には在欧のアメリカ人ベテラン・ミュージシャンであるレジー・ジョンソン(ベース)&アルヴィン・クイーン(ドラムス)と組んで『ウェイティング・フォー・バース』を吹き込みピアノ・ファンの間で話題となった。93年にはペトルチアーニとテテ・モントリュー(カタルーニャ地方を代表するピアニスト)のコンサートでオープニング・アクトを担当。94年にはカナダのバンクーバーとモントリオールの両ジャズ祭に登場して喝采を浴びている。95年にはアフリカを訪れてユッスー・ンドゥールと親睦を深めた(のちに映画『ユッスー・ンドゥール魂の帰郷』へと結実)。97年リリースの『イッツ・ユー』はビル・エヴァンスの「ウィ・ウィル・ミート・アゲイン」、スティーヴ・スワロウの「フォーリング・グレイス」、パット・メセニーの「ジョン・マッキー」等をとりあげた選曲の妙もあってか輸入盤取扱店では隠れたベスト・セラーになった。そして2004年、『タイム・イン・キャルージ』を引っ提げて遅すぎる国内盤デビューを果たし、来日公演も開催。05年にはマイケル・ブレッカーやディー・ディー・ブリッジウォーターをゲストに迎えてアルバム『アクア』を制作。アメリカではサヴォイ・レーベルからリリースされ、モンセフの名は米国のジャズ・ファンの間にも一躍、親しいものとなった。
本作は2011年の『メティサージュ(Métissage、“混合"を意味するフランス語)』、続く2014年の『ポップ・ソングス』以来5年ぶりとなるニュー・アルバム。