病と闘いながらもひっそりと散っていった寡黙なピアニスト、入江宏の残響
キース・ジャレットの「The Melody At Night,With You」を彷彿とさせるソロ・ピアノ集とセッションマンとしての作品集からなる2枚組
コンテンポラリー、フリー・フォーム、メイン・ストリーム、そしてフュージョン…、日本のジャズが熱かった1970年代、ピットインやタロー(新宿)、エアジン(横浜・関内)などのライヴ・スポットにはいくつもの新星が交錯した。1974年に新宿ピットインにデビューした18歳の入江宏もそんなニュースターの一人だった。
その後、ジョージ大塚、山口真文、神崎ひさあき、本多俊之、和田アキラ、ミロスラフ・ヴィトゥス、梅津和時、天野清継らとセッションを重ね、また横浜ジャズ・プロムナードの常連として、同時代のジャズ・シーンに確かな足跡を印した入江だが、現役の内科医としての医業と並行して行われたその演奏活動は、多くの人の耳に触れる機会に恵まれたとはいえなかった。
そして、入江宏は、ピアニストとして、また医師として円熟期に足を踏み入れて早々病を得て、長い闘病生活を経て昨年世を去った。
早すぎる死の直前まで持続された音楽へのふくよかな意思を記録したイノセントなソロ・ピアノ(Disk1)と、彼がピアニスト、キーボード奏者として参加したレコーディング・セッションのコンピレーション(Disk2)からなる本作は、この40年の日本ジャズ・シーンのサイド・ストーリーであると同時に、知られざる名ピアニストが紡いだしなやかな音の軌跡である。
Disc 1:
1.Last night when we were young
2.O Grande Amor
3.I hear a rhapsody
4.Seven step to heaven
5.In your own sweet way
6.Love dance
7.The Island
8.Chan's song
9.Up jumped spring
10.Sonrisa
11.Three views of a secret
12.Star Dust
13.Sketch 1
14.Sketch 2
入江宏(ピアノ)
2007年10月
Disc 2:
1.ホワッツ・ニュー 「バラッド / 和田アキラ」より
和田アキラ(g)木村万作(ds) 富倉康夫(b) 2000
2.ホコ 「リトル・ロード・ギャング / 神崎オンザロード」より
神崎ひさあき(as)小野哲夫(ds)鳴瀬喜博(b)、
堀尾和孝(g)天野清継(g)倉増仁志(perc) 1980
3.フラップ・ザ・ウイングス
「フラップ・ザ・ウイングス / 入江宏トリオ」より
黒崎隆(ds)小林新作(b)益田恵一郎(perc) 1978
4.エンプティー・ミラー 「レガロ / 山口真文」 より
山口真文(ts)水上信幸(b)小山太郎(ds) 1995
5.マラカイボ・コンポーン 「マラカイボ / ジョージ大塚」より
ジョージ大塚(ds)山口真文(ts,ss),松木恒秀(g)
関根敏行(kbds)ミロスラフ・ヴィトゥス(b)
ナナ・ヴァスコンセロス(perc) 1980
6.祈り 「OZONIC / 神崎ひさあき」より
神崎ひさあき(ss) 2006
7.星影のステラ
山口真文(ss) 2012吉祥寺にて
入江宏(p, key 1-7)