前作「ショパン・ラウンジ」に続きバッハの優雅な旋律をスウィンギーにリリカルに、そしてグルーヴィーに甦らせたクラッシー・ジャズの決定盤!
ミュンヘンを拠点にニールス・ペデルセン、チャック・イスラエル、ジョニー・グリフィン、川崎僚、キース・コープランド、ロバータ・ガンバリーニはじめ多くのミュージシャンとの共演で腕を磨いたデヴィッド・ガザロフのバッハに対する熱い思いがジャズになった!アゼルバイジャン出身のピアニスト、デヴィッド・ガザロフによる21世紀のプレイ・バッハ
J. - Jazz
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S. - Swing
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B - Be-¬‐Bop
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A - Afro
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C - Classic
=
H - Harmony
①「イタリア協奏曲」は3楽章からなるチェンバロ独奏曲「イタリア趣味によるコンチェルト」の第1楽章をガザロフがアレンジ。原曲を踏まえたピアノ・イントロに続いてベースとドラムスが入ると、ぐっとジャジーに。ピアノ・アドリブ・パートに進めば、すっかりトリオの世界へと展開する。テンポはリズミカルからスウィンギー、さらにバロック調と細かく変化をつけて、リスナーを飽きさせない。ガザロフの盛りだくさんなアイデアが楽しい。②「アヴェ・マリア」はバッハ「平均律クラヴィーア曲集」第1巻第1曲の前奏曲にシャルル・グノーが旋律を加えたもの。テーマは音数の少ないピアノ、アルコ・ベース、ドラムスがそれぞれ異なるテンポ感覚で演奏しながら、徐々に一体感を強めてゆく構成。アルコからピチカートにベース・ソロが移行し、さらにピアノ・ソロで原曲の世界を発展させる。③「アリア」はヴァイオリンのG線のみで演奏できることで知られるピアノ伴奏つきの独奏曲が原曲。終始同じテンポを保ちながら、ピアノを中心に楽曲の魅力を深く探って浮き彫りにする。ヴァイオリン繋がりでベースをフィーチャーすることも可能だったと思うが、ここではガザロフがピアノにこだわった。④「コラール#1」はバッハが残した6曲のオルガン曲のひとつで、第1曲は「目覚めよと呼びわたる物見の声」と名付けられている。ピアノ&ベースのデュオ・イントロから、ドラムスが加わったテーマへ。ピアノ・アドリブに進むとブロック・コードも織り交ぜて、よりジャジーでファンキーなムードを演出。フィニアス・ニューボーンJr.を想起させる両手の動きも飛び出して、ガザロフのテクニシャンぶりを印象付ける。⑤「マッド・クラウンズ・ドリーム」は本作中、唯一となるガザロフのオリジナル曲。ピアノ・イントロで本作のコンセプトに沿った楽想を示唆し、ミディアム・テンポのトリオ合奏では内省的な一面さえ見せる。後半に入るとビート感を表出して、さらにヴァリエーションをつける。⑥「ジャズ・ブーレ」は「イギリス組曲」第2番をアレンジ。イントロから大胆にジャズ感を打ち出し、テーマもリズミカルに仕立てる。マッシヴなピアノと同じく、ベースとドラムスもエネルギー全開だ。大団円を演出するエンド・テーマが痛快。⑦「モーメンツ・オブ・アンナズ・ライフ」はバッハの妻に捧げられた「メヌエット ト長調」が原曲。電気鍵盤と思われるイントロからピアノ&ベース・デュオ、そしてトリオへと、原曲の世界観を損なわず、優しいサウンドが奏でられる。アルコ・テーマのエンディングが高級感を醸し出す。⑧「ユー・ルック・グッド・トゥ・ミー」はオスカー・ピーターソンが60~90年代の間、ライヴで好んで取り上げてきたレパートリー。ガザロフはピーターソンの64年スタジオ録音作『プリーズ・リクエスト』(原題『We Get Requests』)収録ヴァージョンに基づいてアレンジ。ピアノ&アルコのイントロから、レイ・ブラウン・ライクなベース・ソロをはさんで、ピアノが小粋にスウィングする。改めてピーターソン版を聴けば、そこにはモダン・ジャズ・カルテットへの共感が反映されており、バロック音楽(バッハ)を取り入れた先駆的ユニットのMJQとガザロフの嗜好が一気に繋がって、本曲の選曲理由も明らかになる。 ・・・・・杉田宏樹
曲目:
1.イタリアン・コンチェルト
「イタリア趣味による協奏曲第1楽章」より
2.アヴェ・マリア ー ジ・オンリー・ホープ
「平均律クラヴィーア曲集第1巻第1曲」より
3.G線上のアリア
「管弦楽組曲第3番ニ長調第2楽章」より
4.コラール1番 - パラフレーズ
「シュープラー・コラール集第1番:目覚めよと呼びわたる物見の声」より
5.マッド・クラウンズ・ドリーム
6.ジャズ・ブーレ
「イギリス組曲第2番」より
7.モーメンツ・オブ・アナズ・ライフ
「メヌエット ト長調」より
8.ユー・ルック・グッド・トゥ・ミー
「オスカー・ピーターソン・トリオ1964」より
メンバー:
デヴィッド・ガザロフ (piano)
ミニ・シュルツ (bass)
マインハルト・オビ・ジャンヌ (drums)
録音:2013-4年・ドイツ